SNS時代に生まれた新たな民俗学の扉
本書『中国TikTok民俗学スマホからはじまる珍神探訪』は、SNSを駆使した新しい民俗学のアプローチを提供しています。この本では、中国各地で迷信や信仰を巡る「珍神」を訪ねる旅を記録した驚きに満ちたルポルタージュが収められています。著者の大谷亨氏が描くのは、ただの取材ではなく、現代のフィールドワークとしての新しい道筋なのです。
卓越したフィールドワーク
本書は、TwitterやInstagramのようなSNS時代の中で、いかにして民俗学を実践するかを深く考察しています。特にその活動の中心に位置するのが中国版TikTokで、ここを利用した「お手軽フィールドワーク」が本書の特色です。著者は、180点以上に及ぶ高品質な取材写真と共に、読者を中国の神秘や不思議な風景へと誘います。これらの画像は、視覚的にも非常に魅力的で、読者を引き込む力を持っています。
奇奇怪怪な神々の世界
中国は数多くの宗教や信仰が存在する独特な文化を持つ国です。本書では、その中でも特に興味深い「珍神」と呼ばれる奇怪な神々に焦点を当てています。これらの神々は、実際に地域の人々から愛され、信仰の対象となっています。著者は各地を訪れ、彼らがどのように人々に崇拝されているのかを詳細に描写。時には幽霊や神話に取り巻かれた信仰が、21世紀の社会にどのように影響を与えているのかを探ります。
章ごとの内容
本書は、複数の章に分かれており、それぞれが異なる視点から中国の民俗と深く結びついています。例えば、第一章では「逆立ち張五郎」の伝説や地域の祭りの様子が描かれ、著者が出会った人々や文化の様子が丁寧に記されています。また、第二章や第三章では、それぞれの地域の信仰や祭りの特色に迫り、セクシーな九尾狐や無常信仰など、興味をそそられるトピックに焦点を当てています。
SNSと民俗学の接点
この本の最大の魅力は、SNSの力を借りて民俗学を研究する方法論です。著者はTikTokを利用したフィールドワークによって、現代の慣習や信仰を視覚と参加型の方法で捉えています。これは、従来の民俗学研究の枠にとらわれず、より幅広い視点から文化を理解するための有力な手段と言えるでしょう。
誰に向けて
『中国TikTok民俗学スマホからはじまる珍神探訪』は、民俗学に興味を持つ人々や中国文化を学ぶ学生、さらには旅行好きな読者にとっても非常に有益な内容です。この新しい民俗学の扉を開くことで、読者は自らの視野を広げ、未知の世界に足を踏み入れることができるはずです。
私たちが知らなかった中国民間信仰の世界を垣間見ることができる本書は、2050年の未来に向けての疑問への答えをもたらしてくれることでしょう。ぜひ手に取って、その魅力に触れてみてください。