山田和樹が導く東京芸術劇場の新時代――交響的変容への挑戦

山田和樹が導く東京芸術劇場の新時代

東京芸術劇場が新たな局面を迎えます。2026年4月1日から、山田和樹氏が音楽部門の芸術監督に就任し、これまでにない二人体制での運営がスタートします。この新たなプロジェクトの一環として、山田氏は「山田和樹＆東京芸術劇場交響都市計画」を始動させました。

邦人作品への情熱

山田氏が初めて取り上げる作品は、水野修孝の『交響的変容』です。この作品は、クラシック音楽、ジャズ、民族音楽などの要素を融合させた大曲で、1992年の初演時には約700名の演奏者を要しました。邦人作品の中でも、その規模と内容の両面で最高峰と称されています。

伝説的な演奏陣

初演時に演奏を担当した林英哲氏、東京混声合唱団、栗友会合唱団、そして読売日本交響楽団という強力なメンバーが再び集結し、山田氏と共にこの壮大な作品に挑戦します。「近未来」「芸劇から世界への発信」「クロスオーバー」をテーマに掲げた音楽プログラムは、東京芸術劇場の新たなスタートを告げるものです。

山田和樹のビジョン

山田氏は、公演に向けて強い想いを語ります。「この作品は私にとって特別です。水野修孝先生の作品に触れると、自分が作ったような不思議な感覚があるのです。そのため、この『交響的変容』を選ぶことが自然な流れでした」と話しています。

この作品は過去には再演が難しいと言われていましたが、山田氏はその壁を打ち破り、観客に新たな感動を提供することを目指しています。コロナ禍で人々の集まり方が変わった今だからこそ、巨大な作品を上演し、再び人々が集まる原点を見つめなおそうとしています。

特別なキャスティング

『交響的変容』は、作品が本来持つ壮大さを損なうことなく、場面に応じたアレンジが施されます。山田氏は、読売日本交響楽団と初演時に演奏した同じ合唱団、林英哲氏を迎えたトップキャストでの演奏に自信を見せています。彼自身もこの作品を指揮するのは初めてで、緊張と興奮を抱えつつ準備に励んでいます。

社会へのメッセージ

作品から発せられるメッセージは、今日の社会にも意味深いものです。ただ大きな作品を成し遂げることだけでなく、その先にあるものを見据えることが重要だと山田氏は強調します。「Symphonic（交響的）なものは、Sympathy（共感）を生み出します。この共感の中には調和と混沌が共存しています」と述べ、昨今の世界情勢を受けてハーモニーの価値を再認識する必要があると訴えます。