荒井由実からユーミンへ、音楽の歴史を紐解く
2025年3月24日、株式会社平凡社からラッセ・レヘトネンの新著『ユーミンと「14番目の月」──荒井由実と女性シンガー・ソングライターの時代』が発売されます。価格は税込2,420円。ユーミンこと松任谷由実のキャリアを深く掘り下げるこの著作は、彼女が「荒井由実」名義で発表した名盤『14番目の月』に焦点を当てています。
ユーミンは今秋、40枚目のオリジナルアルバムを発表し、「72歳で72本」の全国ツアーを予定しており、その活動は息の長さと進化を感じさせます。特に『14番目の月』は、彼女の音楽的アイデンティティの形成を顕著に示している非常に重要なアルバムであり、「中央フリーウェイ」や表題曲など、多くの名曲が収められています。これらの曲は、今なお多くの人々に親しまれ、ユーミンコンサートには欠かせない存在となっています。
この書籍では、アルバムに収録された楽曲の詳細な分析を通じて、「荒井由実」時代のユーミンや、彼女と同時代に活躍した女性シンガー・ソングライターとの関連性について考察しています。また、1970年代中ごろに興隆したウーマンリブ運動との関連も無視できません。当時の社会背景と音楽シーンがいかに交錯し、ユーミンを形成したのかが明らかにされていくことでしょう。
著者のラッセ・レヘトネンは、フィンランドで活躍する日本音楽研究者であり、彼の知見はユーミンの作品と日本のポピュラー音楽に新たな視点をもたらします。レヘトネン氏は「ユーミンの膨大なディスコグラフィーの中で『14番目の月』を選んだ理由は、そのオリジナリティと音楽的多様性、そして歴史的背景にあります。この時期を振り返ることは、現在の私たちに意味のある示唆を与えるからです」と述べています。
本書の翻訳には、加藤賢氏とアニータ・ドレックスラー氏が携わっています。日本語に翻訳することで、日本の読者にユーミンとその音楽が持つ魅力を伝え、さらなる発見を促すことを目指しています。
ユーミンはジャパニーズ・シティポップの先駆けとして、今もなお多くのリスナーに影響を与え続けています。彼女の音楽は時代を超越したものであり、特に『14番目の月』はその象徴です。新刊『ユーミンと「14番目の月」』は、ユーミンの音楽的旅を再考する素晴らしい機会となるでしょう。
この新刊が、「荒井由実」としてのユーミンや、彼女が女性シンガー・ソングライターとしてどのように成長したのかを知る手助けになり、音楽の歴史に新たな光を当てていくことを期待しています。
著者情報
ラッセ・レヘトネンは、1986年にフィンランドで生まれ、日本音楽の研究を専門とする若手研究者です。東京大学や東京藝術大学の客員研究員などを経て、現在はヘルシンキ大学の准教授として活躍しています。著書には、ポピュラー音楽から現代音楽、ゲーム音楽に至る日本の音楽を広く扱った作品が多く、今後の活躍が期待されます。
新たな音楽の視点を求める読者にとって、読んでみる価値のある一冊になることでしょう。