八王子芸術祭が初めて開催されたことを記念して、多くのアートイベントや展示が行われています。その中でも特に注目を集めているのが、アーティスト高須賀活良による「石の記憶」展です。この展示は、古代の繊維を使った作品と、現代の布を土の顔料や膠で石のように変化させた作品を特徴としています。その背後には、太古の人々が巨石「磐座」に祈りを捧げたことに起源を持つものづくりの文化があります。
高須賀活良は、大学でテキスタイルを専攻し、修士課程を修了後、全国各地の伝統的な技法や風土を研究してきました。彼の作品は、単に美しいだけでなく、植物や土地に宿る記憶や時間の層を可視化することを目指しています。古代から使用されてきた楮、葛、苧麻、大麻といった植物を使い、それらを糸にし、染色、織りといった工程を経て制作される作品は、彼と土地との対話の結果です。
「石の記憶」展においては、布と石という二つの素材が、祈りと循環の記憶を結びつけています。阿波の青石と呼ばれる美しい石も展示されており、これがまた作品のテーマを深める重要な要素となっています。この展示は、訪れる人々に古代から受け継がれてきた文化の重みを感じさせると共に、現代の視点で再解釈されたアートを提供してくれるのです。
展示の期間は11月8日から12月7日までの約一ヶ月間で、毎週水曜日は休業となります。八王子市中野上町の旧工場跡地で開催されるこの展示は、アートだけでなく、地域の歴史や文化に根ざした深いメッセージを持っています。
加えて、八王子芸術祭は美術や音楽、演劇に加え、ワークショップやトークイベントを通じて地域との関わりを深めることを目指しています。「マチイロProject」と名付けられたこの活動は、地域の活性化にも貢献しており、訪れる人々は「旅人」として八王子の魅力を存分に体感できます。
高須賀活良氏の活動は、八王子の地に根づくだけでなく、幅広い地域プロジェクトにも関わっており、2021年からはFUJI TEXTILE WEEKの企画展ディレクターとしても知られています。彼の編著による『ハタオリ学』は2024年度のグッドデザイン賞を受賞するなど、その活動は広く評価されています。
「石の記憶」展は、地元八王子の歴史や文化と、アートが交差する特別な空間を提供しており、訪れるすべての人にとって何かしらの新たな気づきを与えてくれることでしょう。まさに、アートと地域が一体となる素晴らしい試みと言えます。ぜひ足を運んでみてください。