象牙を使わない箏コンサートの開催報告
2025年10月31日、東京の渋谷区にある東京ウィメンズプラザで、「象牙を使わない箏コンサート~筝曲の地平線を望む夕べ」が開催されました。このイベントは、絶滅の危機に瀕する野生生物の保護を目指す認定NPO法人野生生物保全論研究会(JWCS)によって主催されました。今回のコンサートでは、禁止されている象牙を使用せずに開発された代替素材が用いられ、会場からは熱い拍手が送られました。
植物から生まれた新素材の使用
過去数十年間の象牙取引の影響で、ゾウの生息数は急激に減少しています。そのため、多くの国で象牙の取引が禁止されていますが、日本においては依然として流通が続いています。この現状を受け、今回のコンサートでは新たな代替素材を用いた箏の演奏が行われることになりました。
イベントの開会にあたり、野生生物保全論研究会の事務局長である鈴木希理恵は、アフリカにおけるゾウの密猟と日本の象牙市場について自身の経験を踏まえて語りました。彼女は、「私たちは、和楽器の演奏に象牙を必要とせず、すでに存在しない文化を新たに創造するためにこのコンサートを行いました」と強調しました。
講演の内容と意義
イベントでは、認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金の坂元雅行氏が、「ゾウの密猟と日本の象牙市場」というテーマで講演しました。坂元氏は、象牙の需要が高まることで、いかにアフリカでの密猟が加速したかについて詳しく説明しました。彼は、象牙を使用しない和楽器の需要を高め、象牙市場を終わらせる努力が必要であると訴えました。
また、中越パルプ工業株式会社の橋場洋美氏は、竹から作られた新素材「nanoforest」の開発について話しました。この素材は、自然資源を活かし、環境にも配慮した取り組みとして大きな注目を集めています。
演奏プログラムとその反響
コンサートでは、マイクなしで行われる箏の独奏やアフリカの打楽器とのコラボレーションが繰り広げられました。聴衆は、音楽を通じて象牙を使用しないことが可能であることを実感し、演奏者と共に新たな文化が生まれる瞬間を感じ取ったといいます。参加者からは、「とても素晴らしいイベントだった」といった感想や、演奏の迫力に圧倒されたとの声が多く寄せられました。
それぞれ異なるアプローチで演される5曲が、聴衆を魅了しました。演奏者には、箏のマクイーン時田深山氏、打楽器のアブドゥ・バイファル氏、そして篠笛とフルートの笛吹かな氏が参加しました。
今回は、ズームを使ったオンラインイベントなども計画されており、環境保護と芸術が融合した新しい形の文化活動が広がっています。今後も、こういったイベントを通じて人々の意識を高める機会が提供されることが期待されます。
参加者の声
参加者からのアンケートでは、「代替素材の幅広い表現を知ることができた」や「無いものは作れば良いという理念を体感した」などの感想が相次ぎました。その中には、ゾウの保護の重要性についての気づきを得たとの声もあり、コンサートが単なる音楽イベントを超えた意義を持っていることが示唆されました。
象牙を使用しないことで、音楽を楽しむことができるという新しい文化がここから始まったのです。